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2015年12月4日金曜日

LPS with LLP-GP なんてVC 投資スキームは実は最先端のストラクチャー

イノベーションはどこで起こる?

ストラクチャーのイノベーションはどこで起きる?

ほんの数日前のこと、お仕事を頂戴している方たちから、ファンドのストラクチャリングで最近見ている新しい潮流とその先の影響の議論を伺ったので、ちょっと興味深い話でもあったのでこちらで少し触れてみようかと思います。

金融に特許なし、でもそれで金融は発展した

金融のいいことであり悪いことでもあるのはある目的を達成するためのストラクチャリングが特許権のような属人的な扱いをされることがほぼほぼ存在せず、最先端のストラクチャーを作ってファンドを立ち上げて、そこそこ成功している、なんてのんびりしていると、どういう訳か気付いたらそのストラクチャーは同業他社に早速コピーされてしまう、なんてことは基本的に起こり得るもの、という前提でいなければいけない、わけです。まぁ、そのおかげで初期に開発されたスキームがすぐに特段の前提条件を要しない汎用化されたり、その後の様々な実務上の問題点や法制度の変化などを受けてその解決法を組み込みながら進化したり(言い換えれば面倒なほどに複雑化したり)していくので、特許で守られないことのメリットは業界全部に還元される、というその意味ではいいエコシステムだよな、と思うことも多いです。

で、今回は何よ?

今回聞いた話は、国内の投資法制度の一つ、投資有限責任組合法に基づく組合の設立に絡むことで、普通に考えると、組合をつくるにあたっては無限責任社員が一社、法人格をもったものが通常置かれるのが当然、そうでなければ自然人がリスク取りまくりではあるものの無限責任社員の任に就くことになる、よなぁ、考えるのです。が、今回聞いた話では、サイズも小さいし知り合い同士でお金を出し合っている側面の高いベンチャーキャピタル(VC)投資の世界では、投資の責任を事実上取る案件のスポンサーがLLPを構成して、その LLP が無限責任社員の任に就く、というのが増えつつあるというのです。

確かに、LLP ならば最初の組合設立の登記さえしてしまえば、乱暴な言い方をしてしまえば、登記後は放置しても維持費は言うほどかからず、投資運用の実質は変わらないし、その結果、キャリーを取ろうとすればほぼ全額を山分け可能(笑)という、投資の運営側にとっては会社運営という作業のオーバーヘッドを省けることもあってかなりお得、というものです。

でも、それだけの話?

いえいえ。話の本質はここからなのです。
従来、LLPがGP業務を行うことについては法律上は特段問題はなかったのですが、投資有限責任組合法に基づいて組合の登記を行う際に、GPはLLPではなくLLPの組合員、すなわち実質の運用者が複数名で登記をしていました。その背景としては、LLPは法人格を有しないことから、GP登録したくてもできずLLP の組合員のそれぞれの名前で登記する必要があった、という状態にありました。

しかし、どうやら法務局がその判断でLLPそのものをGP登録できるようにしているそうなのです。実際に登記申請した際に、普通に受け付けているそうなのです。これって、いつの間にかLLPに法人格の付与がされてしまった?と関係者で頭を抱える問題になってしまうのです。

なんで?単なる登記手続き上の法人格の有無だけの問題じゃないの?

ええ、その法人格が実は税金の観点で余計な論議を起こしかねないのです。前述の通り、法人格がないことからビークルとして税務上透過性があるとして、課税すべきポイントが組合の構成員にまでそれぞれ落ちてきていた(構成員課税、と呼ばれています。)わけで、だからこそ構成員レベルでの個別のタックスプラニングに対応出来るというメリットがあるのです。

ですが、これがもし法人格を認めるというと、上記にある課税方法の根拠がなくなってしまうので、他の法人格のあるビークルと同じようにこのビークルで課税できる(ので組合員の取り分が減ってしまう。)、という議論を作りだす素地が出来てしまったのです。

確かに今回は登記手続き上の問題、ではありますが、そもそも登記だって法律に基づく手続きを行うわけですから、LLP を成立させる法の枠組みの中で法人格に関する不整合が起きてしまった、と捉えるべきところかもしれません。

で、どうなるの?

実務上は歓迎されるべきこと、と見ていますので、法人格のないビークルだけど特例でできるように投資有限責任組合法の登記手続きなどを手直しする方が本当はいいのでしょうねぇ。でも、法令の手直しですからねぇ。手間かかるでしょうねぇ。と言っても、税務署がそれまでの間にここに手を出さない no action letter なんかを取るのが安心ですが、やりますかねぇ。

また、これが本当に普及した場合、ベンチャーキャピタルのみならずプライベートエクイティ投資の際の GP として LLP を作ることで運用者自身の会社の GPと実質の運用機能は変わらず「軽い」セットアップで始めて、運営のコストや負担が下がるというのは GP側にとってメリットがいろいろと見いだすことができるはずです。とはいえ、LLP が GP というと、自然人でも法人でもない組織が責任を取れるのか、という形式上の信頼性の問題がどうしても気になる機関投資家はいるんでしょうねぇ。この辺りが、VC と PE との間のプレーヤーの性質の違い、かもしれません。
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