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2016年7月1日金曜日

ファンドにおける中立性は誰の為といえば、投資家の為。

こんなべたなことがあったとは到底思わないけど
でもねぇ。。。sigh

最近、「わが社に新人が入った時に(本ブログを)読ませるようにしています。」と、言って頂くことがあり、ちょっと内容以上に文調(と誤字脱字)に慎重にならねば、なんて思って書くペースが遅くなってます。ごめんなさい。

さて、いきなりの表題、何があったんだ、と思われそうですが、ご存知の通り著者は第三者がファンドに関与することで最終的に世界的な標準となっているファンド・ガバナンスが適切に機能したファンドを日本市場で理解を得て、普及していきたいと考えて仕事の機会を頂戴したり、こうやってインターネットの隅っこでいろいろ書かせていただいている(と上記の事情で舌を噛みそうな言葉使いになっております。。。)のですが、そんな中、ちょっと残念なニュースが飛び込んできたのでご紹介しつつ、表題の目指すところについてちょっと私情全開で書かせていただこうかと思います。

独立系ファンド・アドミが詐欺行為に幇助?

こんなニュースが今月とびこんできました。
Private Fund Administrator Charged With Gatekeeper Failures
ざっくりとした内容は次の通りです(が、当局のプレスリリースですので、内容の正確性はプレスリリースをご覧いただき、個人個人でGoogle Translation など使って翻訳するなりして理解してください。下記は著者のいつものざっくり要約ですので正確性は保証しません!)

米国SEC はファンドに事務代行業務を提供する会社が、2つの顧客に関して、その問題に対して留意せず、また不完全な会計処理を修正しなかったことに対して、350,000米ドル以上の罰金を支払うことに同意したことを公表しました。

Apex Fund Services (US) が明白な詐欺の兆候を見逃し、もしくは無視し、米国SEC から詐欺として処分を受けた二つのファンドと契約して、帳簿を記録して財務諸表を作り、そしてそれぞれのファンドの投資家向けの報告書を作成していたことを米国SEC が調査していました。

「ファンド・アドミはファンドの資産評価とその存在について正しい情報を提供することを確実にする責務を負っているが、Apex はそのゲートキーパーとしての役割を果たさず、SEC の介入までの間それぞれの運用会社の固執するスキームを本質的に可能とさせていた」とSECの高官は説明してた。(以下略)

ファンド・アドミが果たすべき役割とは?

ここで興味深いのは、米国金融当局はファンド・アドミがファンドのゲートキーパーとしての責務を果たすべき、と考えている、ということです。言い換えるならば、ファンドが投資家の資産として適切にファンドの契約書などに記載されているように運用に使われるかどうか、ということを監視する役目としてファンド・アドミに期待されている、ということなのです。

これは、Madoff 事件以降の米国当局のスタンスとして捉えるべきことでもあると思います。それまでアメリカではヘッジファンドの運用とアドミを運用者が兼務する、もしくは運用者の関連会社が行うことで費用を抑えるなどの効果を求めていたところ、Madoff 事件を受けて運用者とアドミの間に資本関係のないことを求めているのです。その意味ではアドミにはより中立的な立場(もしくは少なくとも運用者に相対する立場)でファンドの運営の管理を期待されていた、ということでもあったのです。

ところが、今回の事件においては、第三者的立場でファンドの運営にかかわるべきだったファンドアドミが、運用者のある意味いいなりになって運用に関連性の薄い送金先に送金を行ったり、ファンドの評価や投資家の持分について誤ったまま投資家に送付し続けていた、というところに、詐欺事件の幇助ということも手伝って当局の期待を満たさなかったと言う事での罰金処分となったと言えます。

では、一般的にアドミに求められるものは何でしょう。

ファンドの運営に関する事務一般を執行すること、というのが基本にある中で、ファンドの評価や資金や証券と言った保有資産の保有・移転に関する指示(保有自身はカストディアンが行います)、投資家の異動(投資持ち分の購入による保有者としての名義登録や、譲渡に基づく持ち分移動の記録、そして売却に基づく地位喪失といった履歴や個別投資家の持ち分管理自体はトランスファーエージェント、日本で言うところの名簿管理・名義書換業務にあたりますが、通常兼務するか投資家管理に特化した兄弟会社に実務を集約するので、アドミが一元的に窓口になるケースが一般的ですので、厳密にはアドミの仕事ではないものの、広義の意味でアドミの業務としてここでは扱うとします)やそれに関連して投資家の(FATCA/CRS対応を含めた)本人確認などが通常期待されています。

これらの業務は投資・運用からみると比較的「受け身」になりがちなのは、それらの業務が指示や依頼を端として業務が始まることが大きい事や、その性質上独自の判断や情報(資産評価情報は特に)に基づいて行うことが極めて少なく、また与えられた指示や情報に基づいて行った作業結果に誤りがあった場合の影響の大きさもあるため、でもあります。そのため、アドミ契約をよく見ると結構免責条項が入っている、と言われるのですが、自らの事務エラーではない限りは外部からの情報に極めて多くを依拠しているので自らを守る必要性が高くなっている今は当然に求められるものではありますし、では依頼されたものはすべてやるから免責か、というと対投資家などを考えてファンドの契約書関連にないことはしない、とすることでファンドのために役割を果たす、という立ち位置を明確にしているものがほとんど、ではあるのです。

では、この業務上の役割から要請されるものと、前述の行政当局が期待するものとの間に不整合があったのか、というと個人的には基本的にはないはず、と思う一方で、AIJ 事件以降に年金の資産を受託する日本の信託銀行に対する過度の期待に似たものがあるのでは、という感覚が残るのは正直なところではあります。それは比較的受け身になりがちな業務に指示や情報の再精査を積極的に求めている、というところの温度差、でしょうか。現実問題として、ファンドの契約書にない払い先などについては、当然に見つけ出してしかるべきところですので、温度差であって実務上は基本的には組み込まれているもの、だとは思うのです。

とすれば今回の問題は、ゲートキーパー機能への疑念、という取り上げ方をされていますが、実質的なアドミのファンドの諸々の契約書類に書かれた業務の不適切な執行であり、適切な執行への故意もしくは重過失での不作為であった、と理解する方がすんなり腹に落ちるのかもしれません。

今回の事件の意味するところ

これがすべて、だとは思わないものの 波及的効果だけは起きてほしくないなぁ、と
これがすべて、だとは思わないものの
波及的効果だけは起きてほしくないなぁ、と
さて、今回の事件から私たちは何を学ぶべきなのでしょうか。
いろいろな解釈が可能になってしまいました。

一番願わしくない解釈はこうでしょう。
「だから、独立系のアドミは信頼ならない。はやり大手企業系ですべてを抱えてその企業の責任としてファンドを管理運営せねばならない。」

果たして本当ですか?残念ながら、大手銀行系アドミによる毎年のNAV算出のエラーに基づく損害賠償金の額は年々増えているそうです。これは米系だから、欧州系だから、(もちろん日系だから)では片付かない問題になっていますし、だからこそ前述のアドミ契約での免責条項にNAV算出に関する免責が年々長くなっていることでもあるのです。

また、前述のオフショアを中心とした海外のファンドの潮流としての、ファンド運営の第三者性の担保という話に思いっきり逆行している話だということにも気付いてほしいところです。当然に一つの案件からの収益の抱え込みは企業グループにとっては効率的な収益源になるため狙いたいのは分かりますし、商品販売の際に、「グループで責任もって面倒見ています!」という言い方をしたいのもよくわかります。でも、ファンドの関係者間の利益相反をどうやって解決するのか、考えてください。ファンドは誰の投資のためであって、誰の利益を最終的に最大化するのか(それはフィーの値下げで利益幅をわずかに広げるのが最大化と呼ばないことにも気付くべきことです)、今一度考えて頂きたいところです。

これ以上書くと某社さんの上層部から怒られそうですので、次の解釈に。

「外部のアドミでも結託可能なのか。じゃあ、詐欺案件出来そうなアドミ、小さいところをだまし込んで。。。」

えっと、なめるなよ(怒)では次。

「外部のアドミでも結託される可能性があるのか。そうしたらむしろ自社のアカウントに運用権限を与える形での運用に限定するかな。。。」

大手機関投資家さまでしたら、確かに可能なお話です。マネージド・アカウントの元々の発想がそうですから、アリだと思いますが、失礼ながら御社の事務担当の方が付いてこられるでしょうか。。。

「外部のアドミでも信頼を汚されるリスクがあるならやはり内製化したほうが。。。」

ちょっと待ってください。今回は詐欺の意図をもった運用者がまずありきなのです。しかも一人はSEC登録しないで運営していたくらいなので、詐欺師は法の外からやってくるのです。ですので、大事なことは、ファンドの関係各社を見て、適切な情報開示を要求して対応することを見ながら、このファンドが信頼できるのかどうか投資家が判断して詐欺案件に捕まらないようにする、ことでもあるのです。

「AIJ の時も独立系だったので、独立系なんてもう信じない。やっぱり確固たる企業系列の会社さんにおねがいするのが確実では」

仰ることはよくわかります。悔しいかな、運用についてもパフォーマンスと同じくらい運用会社の知名度が投資選択の際の重要視される要素になっているのも事実ですから、アドミにしても当然のお話なのです。

ですが、大手の画一的な装置産業的なアドミサービスがある一方で、中堅以下では個別対応をすることで柔軟なサービスの対応が可能になるアドミサービスが存在し、また、運用金額のサイズで大手の方がキャパシティーが合う、小さすぎて大手では受けないので中堅に、というようなすみ分けがなされているのが現状です。また、10年も昔では銀行系のアドミがほとんどであったこの世界も、今では銀行系以上に独立系/プライベートエクイティの投資を受けたアドミが徐々に数を増やしているので、その中から選別を進めていくことになりますし、当然のことながら、今回のような事件があると淘汰されるきっかけになってしまう、ということなので、そこは表層だけを眺めるという機能停止にならないで頂きたいなぁ、というのが個人的な見解であり、願いでもあります。

「じゃあ、アドミは今後どうしたらいいのでしょう。」

基本に立ち返って、アドミとしての業務がなんであり、何をして何をしてはいけないのか、それが起きないようにするにはどういう仕組みを組織に導入すべきなのか、それを考えていくしかないのでしょうね。特に今回のリリースを読む限り、担当者レベルでの幇助なのか、それともチームごとなのか、ということが分からないため判断しづらいところではあるのですが、他方で、そもそもそういうことが可能になる管理体制を本来は問うべきところでしょう。これは知人を介して聞ければとは思っているのですが、いずれにせよ、その改善なくば少なくとも日本では次に進めないだろうな、というのも、これは誰もが思うところかと思います。

じゃあ、普通に仕事をしている私たちは安泰かというと、いい機会なのでそういうことが出来ない仕組みになっているのか見直すいい機会かもしれません。こういう時に使われるテクニックであるソーシャルエンジニアリングとはそういうないと思われている隙間をほころびから広げていくものですから、常に業務プロセスを評価し、またその評価方法も適切な評価が出来るのか評価しなおす、という意識も必要になると思われます。

まとめ(本当にまとまる?)

AIJの時がいい例なのですが、一社が事故を起こすと、同業他社に影響が起こるのがどうも金融系のこの業界の常のようですが、他方で、この手の問題は一社だけの問題として自社には関係ない、と放置できないのも現実です。ですので、ちょうど2016年も半期を終えたところ、ということで自社の運営方法の再評価のタイミングと捉えてみるのもいいのかもしれませんし、投資家や運用者の方々に申し上げたいのは、とはいえ、業界の問題か、業界の一部分の問題か、一社の問題か、一社の一部の問題か、という切り分けを手間が掛るもののしてフェアな目で見て頂けたら、と切に願うばかり、です。
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